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第一次世界大戦の授業 ・・2時間

@子どもたちの感想 
      ・人々の墓の数がとても多く(映画のラストシーン)あの一つ一つに、死にたくない思いが
       あったと思うし、16歳のような人が死んでいったのは、むごい。
       写真には、普通の精神じゃできないようなことがされていたが、戦争の恐さが、
       心をおかしくしてしまったと思う・     (たけし君・中三)
      ・どれだけ人が死んでも、道具としか見てなくて、「異状なし」(映画の題名)とか、
       また、兵隊を補充すればいいとかいうことが、許せないと思った。
       戦争で死んだ人のためにも、ビデオとか、写真を伝え続けて、戦争を起こさないように
       していきたい。              (のり子さん・中三)


 Aねらい
      ・第一次世界大戦の特徴を理解する。(新型兵器・大量殺戮・世界大戦)
      ・第一次世界大戦が、人類に与えた意味を考える。


 B準備

映画『西部戦線異状なし』

第一次世界大戦を描いた名作

本『戦争に反対する戦争』

第一次世界大戦後出版された書籍。

植民地の地図

自作の地図をこの授業以前に色分け。教具ページ参照

NHK映像の世紀

大量殺戮の完成。貴重な映像と証言を組み合わせ。秀逸













      ・第一次世界大戦について、よく教師側も、勉強しておく。
       (最適なのはNHKのDVD「映像の世紀・大量殺戮の完成」教材としても最適
      ・第一次世界大戦を描いたものとしては、映画『西部戦線異状なし』が、
       名作として、子どもたちに戦争の現実を突きつける。
      ・DVDとして販売されているので、手に入れやすい。
      ・映画は、全篇見せたいが、時間数の都合で見られない場合もあるので、あらすじを
       書いたプリントを用意する。
(B5版1枚が適当)PDF文書へ(参考用自作プリント)
      ・映画『西部戦争異状なし』は、事前に見て、メモを取り、どこを重点的に
       見せるか考えておく。
      ・字幕ではなく、吹き替え版で、なるべく見せる。
      ・本『戦争に反対する戦争』は、絶版です。
       龍渓書舎、エルンスト・フリードリヒ編、坪井主税訳編、1988年
      ・古書で探してみてください。(写真は何枚か教材のページに載せておきました)
      ・本の写真をどう使うかだが、三通りある。
       デジカメで接写してテレビで映す・CDに焼いてプロジェクターで映す・
       拡大コピーで全紙版にして黒板に張る。
      ・映像で見せると前の画面は残らないが、次々と映せる。コピーなら貼りだして全部を
       見られる。どちらを選ぶかは授業者が決めればよい。写真のどれを選ぶのかも大切。
      ・ただし、最大でも10枚程度、コピーで黒板に張りだすなら、3枚でも十分。
       私は戦死者と、障害を負った人と、残虐行為とを選んでいる。その際にも、
       解説をよく読んで、フリードリヒがなぜこの写真を選んだのかを説明できるようにしておく。
      ・植民地の地図は、自作プリントです。ご自分でも作ってみてください。


 Cポイント
      ・授業の流れとしては、第一次世界大戦の概略を、説明してしまう。
      ・そして、その現実の姿として、映像を見せる。すると、説明が、絵空事ではなく、
       すべて根拠があることがわかる。
      ・第一次世界大戦を教える時、原因と、きっかけを分けて教える必要があると思う。
      ・特徴をおさえるのが、大変重要だと思う。人類にとっての意味を伝える必要がある。
       世界大戦であり、大量殺戮であり、今までと全く違う戦争だということを、
       重視すべきだと思う。
      ・最初、子どもたちは、白黒映画ということで、抵抗を感じる子どもたちが、
       いるかもしれないが、男の子たちには、同級生がみなで戦争に行き、次々と
       銃弾に倒れるというようすが、身に迫り、ぐいぐいとひきつけられていくので、
       あまり心配する必要はない。
      ・写真で強調するのは、戦争で人が死ぬだけではなく、生き残った人々も、
       障害を負ったり、後遺症があったりして、痛ましい人生を送ったことを伝えたい。
     参考:(・この授業の前に、私たちの授業では、産業革命の授業を行い、大量生産のしくみが、
        植民地を必要とし、植民地の奪い合いになるという必然性を、インドとイギリスの
        例を典型として学ぶ授業をしている。)


 D板書
     
 第一次世界大戦(1914〜1918=4年間)
 @戦った国 → 勝ったのは連合国側           B第一次大戦の特徴
  連合国側         同盟国側             ・新型兵器の発明
  ・イギリス         ドイツ              (戦車・機関銃・飛行機・潜水艦
  ・フランス         オーストリア            地雷・毒ガス・鉄条網・手りゅう弾) 
  ・ロシア     対    トルコ            ・大量殺りく
  ・アメリカ                          1000万人の兵士が死亡、けがや後遺症
  ・日本                          ・世界中の人が巻き込まれる
                                 植民地の人々も兵士になる
 A戦争の原因ときっかけ               
   ・原因=植民地の奪い合い               C結果=ベルサイユ条約
       (イギリスが植民地によって大英帝国       ・オーストリア帝国解体
        になったのだから、我が国も植民地が      ・ドイツには巨額な賠償金 →ヒトラーへ
        欲しい)                   
   ・きっかけ=サラエボ事件(オーストリアの皇太子が    D実際の戦争のようす
       セルビアの青年に暗殺)             *映画「西部戦線異状なし」から・・・
                                       考えたことを書こう

                               *写真集「戦争に反対する戦争」から・・・
                                  戦争後の人々の気持ちを知ろう

 E
授業の流れ(2時間以上必要。1時間目で映画を見せたい部分の三分の一、
                   2時間目に残りを見せて戦争の後遺症を伝える)
分  発問  子どもの活動  教具・資料 
 10分








































35分







5分


































今日から第一次世界大戦の勉強をしよう。
(参考:板書する文字は下線を引いた文字)
さて、何年から何年かな?

その通り、じゃあ、ノートに書いていこう。
1914年から1918年4年間の戦争
戦った国は、どことどこ?
うん、うん

あたり!
一方が、イギリス、フランス、ロシア、アメリカで、こちら側を連合国側と呼びます。
相手側が、オーストリア、ドイツ、トルコ
・・で、こちらは同盟国側ね。
さて、どちらが勝ったかというと?


実は、連合国側です。(連合国側に丸を付ける)
さて、日本は参戦したのだけれども、どちらの側に着いたでしょう。

そう、連合国側です。(日本も加える)
戦った国は、わかったね。
じゃあ、次に、戦争の原因
これは何かというと、
植民地の奪い合いです。
前に、植民地の地図を色ぬりしたよね。
その中で、一番植民地を持っていたのは、どこの国だっけ?

そうそう、イギリスね。
イギリスの豊かさを見て、ヨーロッパの国々は、まねようとして植民地を世界中に支配しに行った
・・・ところが、イギリスが一番広く取っていたから、あとから行ったドイツなどの国々は植民地が少なくて不満を抱えていたわけです。
それは、地図を色ぬりしてわかったよね。
産業革命は、植民地の原料がないと、工場が動かせない、というのをずっと勉強したね。一番は綿花。他にも、鉄とか、石炭とか、砂糖、カカオ豆…いろいろ足りないものが出てくるわけだね。
(参考:一連の授業=綿と植民地の戦争の前半部分で学習している)

だから、イギリスをまねて帝国になろうとした国々は、植民地が欲しくて、相手の国を打ち負かしたかったということです。

次に、原因があっても、すぐに戦争にはならない
きっかけがあります。
これは、だいたい、戦争を始める時に、正当化するためのりくつなんです。
第一次世界大戦のきっかけは、
サラエボ事件と言って、オーストリアの皇太子がセルビア人に殺されるという事件が起きました。
この事件が戦争を始める口実になり、世界大戦に発展してしまったんです。
でも、実は、多くのヨーロッパの人々が、戦争は1か月ぐらいで終わると思っていました。それが4年も続いたために、世界大戦にまで、広がってしまったんです。

じゃあ、次に、第一次世界大戦の特徴を三つ、確認しましょう。
ひとつめ、新型兵器がたくさん発明されたこと。
さて、どんな兵器が出てきたでしょう。


そうそう、全部あたり、
他にも、有刺鉄線とか、毒ガスとかが、発明されました。毒ガスでは、粘膜がやられるから、失明したり、呼吸困難に陥ったりして、兵士は、ものすごく苦しんだそうです。
飛行機については、まだ、本格的な戦闘機にはならず、どちらかというと、偵察用だったり、爆弾を手で落としたりするくらいでした。
(資料集で兵器などを確認)

二つめは、こうした新型兵器のために、たくさんの兵士が死んだこと。約1000万人と言われています。
日露戦争が8万人だとして恐ろしいほどの数の違いでしょう?

三つめ、世界が巻き込まれたこと
戦争をした国を、さっき8か国あげたけど、戦場を確認してみると、わかりますよ。
まず、教科書を開けて、どこで戦ったか、地図を見てみよう。

そう、確かにヨーロッパが中心の戦場だったんですが、でも、それだけじゃありません。
さっき、日本が参戦したって言ったけど、どこで戦ったでしょう?


そう、中国でも戦ったんです。
確かに、地中海にも、日本の軍艦は8隻行っていて・・でも、それは1917年になってからなんです

実は、それよりずっと前、1914年に中国に軍艦が行っています。
チンタオという場所が、中国の中で、ドイツが持っていた地域だったんですね。
だから、ヨーロッパが戦争になっている時は、チャンスだというわけ。
実際に、    という人は「      」と言っている。
これはドイツのすきを見て、中国の支配地を奪ってしまおうというわけです。
こういうのを火事場泥棒というんだけれども。
・・・・
だから、戦場は、ヨーロッパだけじゃなく、世界中が戦場になった
それと大事なことがもう一つ。
8か国の兵隊だけじゃなく、植民地の人々も、宗主国という本国の兵隊のかわりとして、兵隊として使われたんです。
例えば、イギリスなら、インド兵、パキスタン兵フランスなら、アフリカ人の兵隊、・・・だから参加した国は30か国近くにまでおよんでしまいました。

そして、第一次世界大戦の結果は、
ベルサイユ条約
です。まけた同盟国側が、連合国側の出した要求に応じたんですが、
どういう要求だったかというと、
巨大なオーストリア帝国が無くなる
ドイツは巨額な賠償金を払う
この賠償金の額は、実は国家予算の何十年分という天文学的金額だったそうです。
・・・・
(詳しくは大恐慌のところで、触れる方がいい)

それで、そうした不満と恐慌が、次のドイツのヒトラーを生み出してしまうんですね。

さて、今まで大まかに説明してきた第一次世界大戦のようすを、映画で見てみましょう。
西部戦線異状なしっていう映画です。
この映画は、白黒だけれど、実際に戦争に行ったレマルクという人が、帰ってきて、あまりにひどい戦争だったというので、小説を書き、それを、映画にしたものです。
アカデミー賞をとった名作です。
ちょうど、あなたちか、高校生ぐらいの学生たちが、張り切って戦争に行くんだけれども、友達が、次々に戦場で倒れていく様子が描かれているからよくわかると思います。では、見ましょう。
(映画を見る)


(重要な場面としていくつもあるが、
 省略して見せるとすれば、
 *学校で軍隊に志願するところ
 *最初の前線で砲撃に合い、
  友人が失明してしまうところ
 *塹壕の中で、砲撃に耐えられずに、
  精神的に不安定になってしまうところ
 *一進一退を繰り返す、ヴェルダンの戦いを
  思わせる戦場のようす
 だけでも見せたい)
(その時、新型兵器についても注目させる。
 機関銃、戦車、地雷、有刺鉄線、手りゅう弾、
 それが、たくさんの人命を落とさせた矛盾を
 よく理解させることになる)
(また、その戦いが精神的にも荒廃させたことも 解説が必要。できれば、
 *フランス兵を殺した後の独言、
 *故郷に戻ってきての疎外感なども)

何でも考えたことを、ひとこと書いておきましょう。短くてもいいし、印象に残った場面を、その通り書いただけでもいいよ。

さて、この第一次大戦に参加した兵士がどうなったか?この映画の中にもたくさん出てきたけれども・・・・・


その生き残った人たちの写真をドイツの人が、
本にして出版したんです。
そのうちの何枚か見てみようね。

この人の写真わかるかな?






多分そうだね
解説にはこうあるよ
「神からの尊い贈り物の一つは、光であるのに・ ・・手りゅう弾の破片が彼の両の目をもぎ取っ てしまった」
この人は?










そう、看護婦さんだと思う。
唇のところが、傷ついてしまって、
呑み込めないのか、噛めないのかもしれない。
だから、管で、食べ物を流し込んでいる。
これには
「無数の人々が、この不幸な男のように
 人口食料摂取を余儀なくされている」
「入院患者は、ドイツだけでも48000人もいる。
 多くの手術は麻酔無しで、完全に意識のある状 態で行わざるを得ない。」
「戦争で、言語に絶する障害をこうむった者の中 には、・・・・出征以来再会していない親類の 者が、彼の哀れな姿を見て卒倒するのではない か、恐怖心や嫌悪感を催して、彼らから永久に 離れてしまうのではないかという心配をしてい るのである」
って書いてあります。
これは、家族に、嫌われるのが怖くて、会えないっていう意味ですね。
つらい思いをしたのに、故郷にも帰れないとは
なんと、悲しいことだろうね。
エルンストさんというドイツの人は、西部戦線異状なしの原作を書いたレマルクという人と同じ、
この戦争に参加して、本当に嫌になった、
この戦争のようすを何とかして知らせたいということを考えて、本を出版し、自宅を博物館にしたんです。
その写真を見てみよう。




これが、エルンストフリードリッヒ





これは、その博物館。








これは、当時のドイツ首相に表彰されているところ

良い質問が出たね。
やっぱり、すぐには、世界大戦にならないだろうと、世界中の人は思っていた。
それなのに、また世界大戦が起きてしまったのには、やはり大きな原因があるね。
それを、また、時間をかけて勉強して行こうね。
ベルサイユ条約が、大きな役割を果たしていったんだけれど、それも、詳しく知る必要があるね。

・世界大戦?

・1914年から1918年




・アメリカ
・イギリス
・ドイツ





・イギリス
・連合国側
・同盟国側


・アメリカ?
・連合国側?







・イギリス
・イギリス
・フランス?






・原料が足りない?




























戦車
マシンガン・手りゅう弾
飛行機・潜水艦

・毒ガスがあるんだ


・こわいね


・手で落とす?




・そんなに違うの?





・ヨーロッパで戦ってる。
・フランスとドイツ




・ヨーロッパ
・朝鮮?
・中国?























































































・死んだ
・大けが











・目が見えなくなっている?










・口にチューブがあるよ?
・左のほうのは人の手?



















・かわいそうだね
・僕だって家に帰りたくない
・でも、帰りたいよ
・でもショック与えたくない
・わかるよ








・博物館作ったの?
























・それなのに、どうしてドイ ツはまた戦争したんだろう
・世界だって、何で2回も大戦 したの?






教科書や資料集の
ヨーロッパの地図を見ながら説明する。

ノートにまとめてかかせながら説明。





















植民地色分け地図


















































資料集で新型兵器を確認する












教科書の第一次大戦の戦場地図を参照































































映画
『西部戦線異状なし』








あらすじのプリント























エルンスト・フリードリッヒの『戦争に反対する戦争』からデジタルカメラで撮っておいたものを映す


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